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Designer Interview 金子敦史  KANEKO Atsushi 

協働することで、新しい価値を付与する

閑静な住宅街に佇む趣ある石蔵が金子さんの仕事場。東京やウィーンで建築を学び、住宅の設計やまちづくりなど、手がける領域は広い。まずは建築の世界に入ったきっかけから話がはじまる。

14歳のときに家の立て替えがあったんです。前の家は築100年くらいで、事務所にしている石蔵くらいの大きな土間がある家でした。建て替えた後も昔の家のイメージがずっと残っていて、もう1度つくれたらいいなと思って建築家を目指しました。大学ではキャンパスの改修のほか、市庁舎や劇場、観光センターに集合住宅のコンペとかやらせてもらいました。好きな建築家にアドルフ・ロース(Adolf Loos)という人がいて、話し出すと長くなっちゃうんですけど(笑)、オーストリアの人で、住宅を多く手がけている建築家。当時、彼の日本語版の書籍が1冊しかなくて、ちゃんと原文で読みたいとウィーンへ留学することに。ウィーン工科大学に通いながら、現地の設計事務所で働いていました。そこで学んだことは、「集合住宅の価値はどこで決めるのか」ということ。向こうではファサードの彫刻がいい方が価値があるという考え方があって、それって建築家より彫刻家が価値を高めているということ。建物をつくるにしても、建築家だけでなく彫刻家とか、そういう人たちの方が価値を付与することがあるということを学びました。

日本に帰って修士論文を書くんですが、テーマは「芸術家との協働性」。ウィーンでは彫刻だったんですけど、論文では人に置き換えて、建築家と芸術家。芸術家といっても、家具職人でもいいし、絵を描いている人でもいい、そういう人たちと一緒にやることで、建築家は何を目指しているのかという内容です。今、異業種が関わって何かするってのは、王道になりつつあると思います。そっから、じゃあ何を求めていくのか。最近、リノベーションという言葉がいいなと思っています。リフォームとはちがうんですよね。リフォームは家があったら問題を解決してあげて、新しい形にしてあげること。リノベーションは、リ・イノベーションなので、新しい考え方を付加させる、変えてあげる。協働という話が多くなっているのも、それを求めているからかもしれませんね。

ものとの距離や時間が価値を生む

浜松の街中、肴町で開催する雑貨市「まるたま市」の実行委員であり、会場構成も手がけている。まちづくりに対する想いや課題感を語ってもらった。

空間とものの多様な関係性を受け止める器をどうつくるか、その価値はなんなのかということをよく考えています。すごく漠然としたテーマですけど(笑)。まるたま市でいうと、今後発展するには、いろんな空き店舗をどんどん使っていくのが大事。毎回まるたま市をする1ヶ月前に作家さんを呼んできて、どこでやりたいか町歩きをする。お店のオーナーさんと直接話をしてもらって、じゃここでやろうよと決まっていくとすると、毎回毎回ちがった場所で、ちがうとこで多発的にまるたま市が行われていくことになる。ポイントは、人々が街を散策するということ。販売する作品がどうとか、空間がどうなるかというよりも、オーナーと作家さんをつなぎ合わせる散策性が重要で、そういう大切さに気付く器(システム)をつくりたいというのが、まるたま市にはあります。あともう1つ気に掛けているのが、ものと価値が1対1の関係にならないようにすること。例えば昔の大黒柱って、田の字平面の中心にあって構造的に重要という意味もあるけど、その家のシンボル的な存在で、生活に密着していました。構造以外にもいろんな意味を見いだせる。これって街も同じで、今の郊外型ショッピングモールは消費するだけの場所で、それ以外の価値ってなかなか見つけにくい。逆に街の面白さって何なんだろうって思ったときに、じっくり、ゆっくりいろんなものを見て楽しんだり、人と話したりできる。そういう街のあり方をつくっていけば、そこに価値を見いだす人の場所(街)になる。

ただ、これは人とものが接している時間の長さだったり、距離感の話でもある。効率や生産性だけにとらわれない、確定的ではないが持続性ある価値観を見いだしていきたいと思っているんですけど、それがなんぞやと日々考えているわけです(笑)。あと、イベントをしていて大事だなと思うのは、何か活動を起こすにしても、それが持続的であるということが大事。ぽんぽんぽんと、1個1個のイベントが多発しても、それが単発だけで終わっていくと人は集まってこない。持続的に行われていくとか、単発なモノでも関係性が見えてこないと、ただイベントを生産しているだけで、内容を新しくても構造が旧式のままではあまり面白くないですよね。

つながることができるか、が分岐点

静岡市の「シズオカ×カンヌウィーク」の会場構成やまちづくりなど、静岡との関わりも深い金子さん。最後に、静岡市と浜松市に感じていることを聞いてみた。

最初に感じたのは積極性のちがい。商業の街なのか、ものづくりの街なのかのちがいが出てるのかなと思っていました。浜松の人は何かやるんだけど、自分が何かものをつくっているとか、なにかイベントに出るとか、それに対する意識が強いし、プライドが高い。いいものをつくっているんだけど、連動し合わない。それぞれがそれぞれで面白いことをしていて、俯瞰すると多発しているような印象。でも個人プレイ。一方で静岡の人はプライドがない(笑)。ないというとおかしいけど、こういうイベントやるよと言うと、俺もそれに出るから余分にテーブルつくってよとか、スペースを与えるとすっと入ってくる。家具屋さんが家具を置いて、俺カレーつくれるから店やるよとか、カーテン屋さんが来て販売しながら鶏肉焼いて、一緒に店をはじめちゃったり、それが常設で行われている。僕のイメージでは静岡の家具屋さんの1/3はカフェを併設しているんじゃないかと(笑)。それが好きでトラックに乗って、地方のイベントにカフェとして出展する人がいたり、一緒に何かやっちゃう潔さを静岡に感じる。これはどっちがいいとかではないんです。

それでも僕は浜松に可能性を感じています。個人個人でやっている方、イベントをされている方がつながって、生まれる価値みたいなものを提供していくことで、一気にポンとはじけるんじゃないかと。最近家具作家の友人と一緒にやるときに、紙芝居的なものをつくろうという話になったんです。紙芝居って、シーンが幾つも出てくるような、めくって1枚1枚ちがうのに、でもつながっているじゃないですか。パンパンパンと、そのつど一瞬の経験かもしれないけど、それが何かしらの関係性を持つことでひとつに繋がっていくのようなものをつくれないかと。街を使う人が変わっていっても、何かしらもののあり方とかが継承されていくような、そんなものをつくっていきたいですね。

Profile

金子敦史KANEKO Atsushi

1984年生まれ。
金子敦史建築計画工房主宰。
2008-10年、ウィーン工科大学留学、AllesWirdGut勤務。
2012年、東京工業大学大学院修士課程修了とともに浜松へ戻る。
建築を、家具、まちづくりなど総合的に捉える立場をとり、幅広く活躍。


http://atsushikaneko.com/

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デザイナー・オープリソースプロジェクトは、浜松に関わりのあるデザイナーに焦点をあて、その持てる力を引き出すためのプロジェクトです。

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